皆さん、こんにちは!今日は金融の歴史の中でも特に興味深い話、「ゴールドスミスから銀行業がどのように生まれたのか」についてお話ししたいと思います。実は、私たちが当たり前のように利用している銀行システムには、驚くべき起源があるのです。
金貨時代の商人たちの悩み
まず、時代は17世紀のヨーロッパに遡ります。当時のお金といえば主に金貨と銀貨でした。これは一見素晴らしいことのように思えますが、実は大きな問題がありました。
スペインの作家セルバンテスはこう記しています。 「金貨は心労をもたらすが、金貨の欠如もまたしかりである。しかしながら、後者の場合は心労はある程度の金額を手にすれば軽減するが、前者のそれは多く持てば持つほど一層募るという点に違いがある。」
なぜなら、金貨は実体のあるもので、たくさん持っていればそれを守る苦労も大きくなるからです。泥棒の心配だけではありません。信頼できると思っていた使用人が金貨を全て持ち逃げするという事例も相次いでいました。
ロンドン塔からゴールドスミスへ
イングランドのロンドンの大商人たちは、最初、稼いだ金貨をロンドン塔(イングランド王国の要塞)に預けていました。しかし1640年、チャールズ1世が財政難を理由にロンドン塔の金貨を没収しようとした事件があり、商人たちはロンドン塔を信頼しなくなりました。
そこで新たな金貨の預け先として登場したのが「ゴールドスミス」と呼ばれる金細工師たちでした。彼らは商売道具である金を保管するために、巨大で堅固な金庫を持っていたのです。
預かり証からお金の誕生
ゴールドスミスたちは商人から金貨を預かり、自分の金庫に保管するサービスを始めました。そして「これだけの金貨を預かりました」という預かり証を発行しました。かさばる金貨の代わりにこの預かり証を持つ方が管理は楽で安心だったため、このサービスは大流行しました。
やがてゴールドスミスの手元には莫大な金貨が積み上がっていきました。ここで彼らは重要な気づきを得ます。 「預けてきた商人たちが一斉に返却を求めに来ることはない。ならば、別に誰かに貸し出しても構わないのではないか」
そこでゴールドスミスたちは、商人たちから預かった金貨を、金貨が必要な借り手に貸し出すサービスを始めました。当然、これは仕事ですから、貸し出す際には手数料、すなわち金利を徴収しました。
金証手形の革命
さらに革命的な変化が起きました。ゴールドスミスが発行していた預かり証(「金証手形」と呼ばれた)が、そのまま支払いや決済に使われるようになったのです。
例えば、100万円分の金貨をゴールドスミスに預けて預かり証を受け取った商人が、その後100万円を支払う必要が生じた場合、わざわざ預かり証をゴールドスミスに持ち込んで金貨に戻す手間を省き、預かり証そのものを支払いに使うようになりました。支払いを受けた人も、どうしても金貨が欲しければ、その預かり証をゴールドスミスに持ち込めばよいという具合でした。
この変化により、ゴールドスミスはお金の借り手に対して金貨を貸し出す必要がなくなりました。借り手に対して最初から預かり証で貸し出せばよかったのです。金証手形とは文字通り手形であり、紙に数字を書くだけでよかったのです!
現代銀行の原型が誕生
このゴールドスミスによる金証手形の貸し出し、厳密には借用証書と引き換えのお金の発行が、今日の銀行業の原型となりました。現代の銀行も、現金紙幣という日銀の借用証書と引き換えに預金というお金を発行している点で、基本的な仕組みは同じなのです。
そして、17世紀のイングランドでは、ゴールドスミスによる金証手形の貸し出しビジネスが大発展しました。この仕組みがさらに発展し、1694年には世界初の中央銀行であるイングランド銀行が設立されるに至りました。
考えてみれば不思議なシステム
ゴールドスミスの発明した仕組みを考えてみると、実に不思議なシステムです。彼らは預かった金貨よりも多くの金証手形を発行することができました。なぜなら、全ての人が同時に金貨を求めてくることはないと分かっていたからです。
これが現代の銀行システムの基礎となりました。重要なのは、銀行は「預金を貸し出す」のではなく、「借用書と引き換えに新たな預金(お金)を創造する」ということです。銀行は借り手の借用書(債務証書)を受け取る代わりに、通帳に数字を記入するだけで新たなお金を生み出しているのです。これが信用創造の本質なのです。
ゴールドスミスの知恵が変えた世界
金細工師の知恵から、世界の金融システムが生まれたというのは驚くべきことではありませんか?彼らの創意工夫が、今日の経済活動を支える銀行システムの礎を築いたのです。
お金が単なる物質(金や銀)から、信用に基づく記録へと変わったこの変化は、経済活動を飛躍的に拡大させました。もはや貨幣の発行は、金や銀の採掘量に制限されることはなくなった(つまり無限に発行できる)のです。
ゴールドスミスの知恵が生み出した銀行システムは、その後の世界経済の発展に計り知れない影響を与えました。彼らの実践的な解決策が、今日の複雑な金融システムの始まりだったと思うと感慨深いものがあります。